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海外諸国におけるDX事情 ASEAN編①
新型コロナウィルスの影響により急務とされるデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、分野によってはアジア新興国に比べて日本のDXは遅れているとの見解があります。経済産業省では、日本企業とアジアの新興国企業の連携を促進し、デジタル技術を活用した社会課題を解決する新規事業の創出するための取り組みに推進するため、「アジアDXプロジェクト」という名の活動が始動しています。
そこで今回は、海外諸国のDX事情 ASEAN編と題し、ASEAN地域におけるDXの現状と、ASEAN・日本間における企業間連携の支援体制についてご紹介していきたいと思います。
成長著しいASEAN地域
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が今年発表した「世界デジタル競争力2020(The IMD World Digital Competitiveness Ranking)」によると、シンガポール(2位)や香港(5位)、韓国(8位)などのASEAN地域の国々が昨年から順位を上げて上位にランクインしており、ASEAN地域における急速なデジタル化の動きを伺うことができます。ちなみに、日本は昨年から順位を4つ落とした27位のランクインという結果になっています。
また、米国の調査会社CBインサイツによると、2019年9月時点で世界におけるユニコーン企業は394社存在しており、そのうち151社がアメリカ、82社が中国ですが、東南アジア、インドにおけるユニコーン企業は26社に及び、近年ではライドシェアサービスのグラブ(シンガポール)やゴジェック(インドネシア)など、ASEAN地域からも続々とDXを実現する有望なユニコーン企業が誕生しています。また、日本にも存在しない評価額100億ドル以上のスタートアップ企業もすでに4社存在し、デジタル技術を活用したプラットフォーマーが急速に成長しています。
経済産業省によると、モバイル経由のネットアクセス時間の1日平均はタイが5.2時間と世界最長で、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどもアメリカや日本を大きく上回っています。また、新たなテクノロジーはリスクよりも大きな機会をもたらすと考える人の割合を示す”技術への楽観度”に関する調査では、日本が44%であるのに対し、インド 79%、フィリピン 74%、シンガポール 62%と、日本に比べASEANの国々ではテクノロジーに対するスタンスがオープンであることがわかっています。こうしたことから、ASEAN地域におけるモバイルファーストな文化や技術実装への高い積極性が伺えます。
ASEAN地域におけるDXの背景には、既存の制度や仕組みがないため、デジタル技術を活用した社会課題の解決をスピーディに実現できるといったことが挙げられています。これに対し、日本の場合は広範囲に及ぶ複雑な社会システムが成熟し、その中でさまざまなレガシーシステムが稼働しているため、大胆なDXを行うことが難しいといった見解があります。
経済産業省が進める「アジアDXプロジェクト」
ASEAN地域の急成長を受け、日本政府ではアジア新興国との連携を深めるための取り組みを展開しています。2020年7月に閣議決定された成長戦略実行計画の中では、新興国企業との連携による新事業創出を「アジアDXプロジェクト」として推進する内容が盛り込まれ、日本企業の企業文化を変革するきっかけとなることが期待されています。
すでに独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ではデジタルトランスフォーメーション推進チームを立ち上げられ、有望な新興国企業の発掘や現地政府との調整など、新興国企業と日本企業との連携を促進する体制が整っています。「アジアDXプロジェクト」では、日本から資金や技術・ノウハウ、ネットワークや信用を提供し、新興国からは膨大なデータや市場(東南アジア、インドで人口約20億人)などの提供を受けることで、相互補完的な企業間連携を生み、イノベーションの還流による新たなビジネスの創出を目指しています。
具体的な支援内容として、JETROでは実証事業による支援とオンライン上のDXプラットフォームを通じた支援を行なっています。
実証事業(パイロットプロジェクト支援)による支援
JETROでは、日ASEANが一体となってデジタルイノベーションの社会実装を進めることを目的とした「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」を立ち上げ、すでに23件の事業者を採択し、支援を開始しています。採択事業者には、医療・ヘルスケアや農業、環境、観光、製造などの分野における、大企業からスタートアップ企業までの幅広い企業が名を連ね、ASEAN諸国での事業展開に向けた取り組みが進められています。
そのほか、アジアの新興国企業との連携促進を通じ、新規事業に取組む企業の創出・成長・海外展開を加速化するため、海外企業等の情報収集やネットワーキング、試行機会の拡大等を支援することを目的とした、「アジアDX等新規事業創造推進支援事業費補助金」が立ち上がり、すでに10社の企業が採択事業者に選定されています。
DXプラットフォーム
実証事業による支援に加え、JETROではオンライン上での「DXプラットフォーム」を始動し、ウェビナーやマッチングイベント、ハッカソン等の開催を通じた協業・連携案件の創出の支援を行なっています。
すでに日本とASEAN、インド、イスラエル間のオンラインイベントが多数開催されており、スタートアップや財閥などの現地企業と日本企業を結び付け、社会課題解決に向けたソリューションや新規ビジネスの創出を目指した動きが活発化しています。また、JETROではこのDXプラットフォーム上で組成されたプロジェクトをスピーディに具体化することを目指し、実証事業支援などの支援メニューを活用したフォローアップも実施しています。
まとめ
今回はASEAN地域における急速な成長に見るDXの現状と、日本とASEANにおける企業間連携の支援体制についてご紹介してきました。「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」における23の採択事業者はこちらからご確認いただけますので、各企業が具体的にどんな取り組みを行なっているか是非ご覧になってみてください。
次回は成長著しいASEAN地域におけるDXを実現する、企業の事例を見ていきたいと思います。
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