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(JP Only) What is DX Guideline?
前回の記事では、日本のDX化についてその原因や課題について考えました。日本のDX化が海外諸国に比べて遅れている現場のボトルネックには「部分最適化されたシステム」の存在があり、それらが生まれた背景には以下の3つの要因があることを紹介しました。
- 企業内部のIT人材が不足している
- 全体最適なシステムの構築においては、短期的なROIを見込みにくいため、プロジェクトが途中で終了してしまうケースが多い
- 部分最適化されたシステムへの経営層の危機意識が低い
上記のような課題に対処しつつ、実際にDXを推進していくためには具体的にどのような点を意識すべきなのでしょうか。今回は実際にDXをどのように推進していくべきかについて、経産省が発表している「DX推進ガイドライン」をもとに考えていきたいと思います。
DX推進ガイドラインとは
経産省は『DXレポート ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開』の中で、「DXを実現していく上でのアプローチや必要なアクションについての認識の共有が図られるようにガイドラインを取りまとめることが必要」と指摘しており、それに伴ってこのDXガイドラインが発表されることとなりました。このガイドラインは、DXを推進するにあたって経営者が押さえるべき事項を明確にし、取締役会や株主がDXの取り組みをチェックする上で活用できるものとすることを目的としています。内容は以下の2部で構成されています。
(経済産業省HPより)
1. DX推進のための経営のあり方
2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
今回は上記2つの項目を順番に説明していきます。
DX推進のための経営のあり方、仕組み
ここでは、DX推進のための経営のあり方、仕組みを創り上げるためには、以下の5つの項目に取り組むべきだと示されています。
1. 経営戦略・ビジョンの提示
2. 経営トップのコミットメント
3. DX推進のための体制整備
4. 投資等の意思決定のあり方
5. DXにより実現すべきもの:スピーディな変化への対応力
1つ目の「経営戦略・ビジョンの提示」は、データとデジタル技術を活用して、どの事業分野でどのような新たな価値を生み出していくのか、明確な経営戦略とビジョンを提示できているか、という項目です。
「AIを使って何かやってほしい」など、明確なビジョンを経営者が描けていないにも関わらず部下にDX推進を丸投げするやり方は避けるべきです。特に、明確な目的がない技術起点のPoC(実証実験)は、企業とベンダー両社の疲弊と失敗を招きます。
2つ目の「経営トップのコミットメント」は、DXを推進するにあたりまずは経営者が強いコミットメントを示せているか、という項目です。前回も述べた通り、全体最適なシステムの構築には組織や企業文化における大きな変革が求められます。社内からの抵抗があることも容易に想像がつきますが、そういった場合には経営者がリーダーシップを発揮し、責任を持って意思決定することが求められます。
3つ目の「DX推進のための体制整備」は、経営戦略や提示されたビジョンと紐づけられた上で、経営層が各事業部門に対してDX推進のための新しい挑戦を促し、かつ挑戦を継続できる環境を整備しているか、という項目です。これには、新たな挑戦を積極的に行っていく「マインドセット」、デジタル技術の活用を推進するためのDX推進部門の設置などをはじめとした「推進・サポート体制」、そしてDXの実行に必要な「人材」の育成・確保に向けた取り組みが必要とされています。
4つ目の「投資等の意思決定のあり方」では、DX推進のための投資における意思決定において意識すべき以下の3つの点を示しています。
①コストのみでなく、ビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか
②定量的なリターンや角度を求めすぎて挑戦を阻害していないか
③投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか
そして5つ目の「DXにより実現すべきもの」は、DXによるビジネスモデルの変革が、経営方針の転換やグローバル展開などへのスピーディな対応を可能とするものとなっているかを追求する指標です。
これら5つのあり方を踏まえた上で、次にDXを実現する上で基盤となるITシステムを構築するにあたって意識すべき点について紹介します。
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築のパートは、「体制・仕組み」と「実行プロセス」の2段階に分けて構成されています。体制・仕組みは以下の3つの項目から構成されています。
1. 全社的なITシステムの構築のための体制
2. 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
3. 事業部門のオーナーシップと要件定義能力
1つ目の「全社的なITシステムの構築のための体制」は、全社的なITシステムの構築のため、必要なデータとその活用方法やシステムの全体設計を描ける体制と人材を確保できているか、という項目です。経営層、事業部門、情報システム部門などからなる少人数のチームをつくり、トップダウンで変革を行うという方法も効果的です。
2つ目の「全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス」は、ITシステムが事業部ごとに個別最適となることを避け、システムが複雑化・ブラックボックス化しないためのガバナンスがあるか、という項目です。加えて、全社的なITシステムの刷新にあたっては、外部のベンダー企業に丸投げせずに自らがシステム連携基盤の企画や要件定義を積極的に行っているか、という点も重要です。
3つ目の「事業部門のオーナーシップと要件定義能力」は、各事業部門がオーナーシップを持ってDXで実現したいこと事業企画や業務企画を明確にしているか、そしてベンダー企業から提案を踏まえ自ら要件定義を行い完成責任まで担えているか、という項目です。各事業部門がオーナーシップを持たず情報システム部門任せなどにしてしまい、結局事業部門側が満足できるITシステムが構築できないといった失敗ケースもあるため、注意が必要です。
次に、実行プロセスについては以下の3つの項目から構成されています。
1. IT資産の分析・評価
2. IT資産の仕分けとプランニング
3. 刷新後のITシステム:変化への追従力
1つ目の「IT資産の分析・評価」は、現状のIT資産を正しく分析し、評価ができているかを問う項目です。
2つ目の「IT資産の仕分けとプランニング」は、ビジネス環境の変化に応じた迅速なビジネスモデルの変革に適しているかや、個別最適ではなく全体最適なシステムとなっているかなどの点を考慮しながら、IT資産の仕分けやプランニングができているかという項目です。先行事例として、IT資産の現状を分析した結果、半分以上のシステムが利用されておらず業務上止めても影響がないということが判明し、それらのシステムについては廃棄を行う判断をしたというケースもあります。
3つ目の「刷新後のITシステム:変化への追従力」は、刷新後のITシステムはビジネスモデルの変化に迅速に対応できるものとなっているか、という項目です。そして、ITシステム自体の評価ではなく、ITシステムの刷新でビジネスがうまく機能しているかを評価する仕組みを構築することも重要です。
このように、前半の「DX推進のための経営のあり方、仕組み」を踏まえた上で、刷新後の目的を明確に掲げながら、適切な体制とガバナンスを通じて全社的なITシステムの構築に取り組んでいくことが重要です。
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前半と後半合わせて11項目ご紹介しましたが、DXを推進していく上で前提とすべき内容が網羅されていると思います。まずはそれぞれの項目を自社のケースで照らし合わせ、いくつの項目にYesと答えられるかを把握してみましょう。答えがNoになる項目については、新たな視点として今後の経営・事業運営に取り入れてみてください。
次回は、入門編①に続き海外のDX先行事例をご紹介します。
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