BLOG
(JP Only) Case Studies of Leading DX Company with ”4 Key Success Factors” in Overseas Vol.5
今回は、前回に引き続き海外におけるDX事例を取り上げていきます。他社事例からDXのイメージを掴むことで、自社に活用できるヒントを得ることに繋がるはずです。特に海外にはDXの先進事例が数多く存在しますので、各業界のリーディングカンパニーがどのような取り組みを展開し成果に結びつけているか、事例を通じて考えていきたいと思います。
DXの成功事例とは?
はじめに、改めてDXの成功の定義について確認します。これまでご紹介した通り、DXが成功した場合に企業が得られるものは以下の4つです。DXとはこれまでみてきたように、全体最適を通して業務やプロセス、企業文化そのものを変革し、競争上の優位性を確立することです。
それでは、DXが成功した場合に企業が得られるものとは何でしょうか?
それは次の4つが挙げられます。
- 顧客との関係強化
- 顧客の実際の購買行動に基づいた新しい購入への道筋の創造
- 競合優位性
- 競合優位を持つプラットフォームの構築
- データ
- データの資産化
- 革新的なサービス
- アジャイルな試行による革新の創造
上記4点に当てはまることを前提に、今回は自動車、玩具、消費財業界における事例を3つご紹介したいと思います。
【関連記事】
・DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?入門編①
・日本におけるDX先進事例
・【AI×OCRによるペーパーレス社会の到来】文字認識の基礎知識とRPAで広がるビジネスの可能性
GE
GE(ゼネラル・エレクトリック)は、1892年に創業し、世界約170拠点で30万人以上の従業員を擁する世界最大級の多国籍コングロマリット企業です。電力事業を主軸とし、その他にIT機器や航空機の製造、金融や不動産業など多岐にわたる事業をグローバル展開しています。
GEは2015年に「デジタル・ウィンド・ファーム」というコンセプトを発表し、デジタル技術を屈指して風力発電所の生産性を向上させる取り組みを開始しました。この取り組みは、各発電所の立地条件や風の状態などのデータを収集したのちに、そのデータをもとにバーチャル上に「デジタル・ツイン」と呼ばれる仮想発電所を構築し、一つ一つの発電機が最も効率よく稼働するよう設計をカスタマイズするというものです。「デジタル・ツイン」では、各発電所のポールの高さや、ブレードのピッチ角、タービンの出力などを数十種類もの組み合わせの中から選択、シュミレーションし、最も効率のよい設計の発電機を現実世界に構築することが可能です。
GEはこのコンセプトにより、風力発電所全体のエネルギー生産量を約20%向上させ、100メガワットの発電所であれば耐用年数期間に1億ドル相当の付加価値を生み出すことができるとしています。
Tesla
テスラはアメリカのシリコンバレーを拠点に、電気自動車およびソラーパネルや蓄電池などを販売する企業です。2003年に創業し、従業員数は約4.8万人、売上は2兆6000億円を超えます。
2007年にイーロン・マスク氏がCEOに就任し、その後100%電気自動車のラインナップをもとに急成長。2020年7月には時価総額22兆円を超え、日本が誇るトヨタを超えて時価総額世界No.1の自動車会社にまで発展しました。
テスラが販売するモデルには、従来のガソリン車とは異なる様々な特徴がありますが、今回はその中でもテスラのオペレーティングシステムであるソフトウェアに着目したいと思います。
テスラのモデルは、全てソフトウェアありきでハードウェアがデザインされています。つまり、自動運転機能やスマホアプリからの操作など、ユーザーにとって便利な機能を数多く実装することをベースに自動車を製造し、それによって従来の自動車では実現できなかった高度なユーザーエクスペリエンスを提供しています。
逆に、従来の自動車はハードウェアに乗っかる形でソフトウェアが後付けされ、エンジンなどのハードウェアありきでソフトウェアがデザインされていました。そのため、ハードウェアを最大限活かすために単一機能を持つ様々なソフトウェアが実装され、パーツが複雑に組み合わさることで、新しいモデルが登場すると古いモデルは時間を追うごとに機能が陳腐化してしまうという課題がありました。
しかし、テスラの場合は、様々な機能を持つオペレーティングシステムが実装されているため、遠隔でソフトウェアをアップデートすることができます。つまり、車を買い替えなくても、車の性能を常に最新のバージョンに保つことができるのです。実際に、定期的に行われるソフトウェア・アップデートにより車の加速性能が向上したり、セキュリティ機能の実装や自動運転機能のアップデートが行われています。そして、ソフトウェア上に集まる様々なデータをもとに、より良い顧客体験を実現するための機能を企画・開発することができます。
テスラはそれまで主流ではなかった電気自動車の分野で成功を収めていますが、その背景にはこれまでの自動車業界の常識を覆すDX思考が取り入れられているのです。
平安保険
平安保険グループは1988年に中国深圳で創業し、現在は中国全土に170万人以上の従業員を抱える大企業です。2020年時点の時価総額は約23兆円で、中国国内の時価総額ランキングではアリババやテンセントなどに続き第4位にランクインしています。
平安保険は社名にもある通り保険事業を主軸としている企業ですが、現在は保険以外の様々なサービスをデジタル上で展開しています。その理由に、保険特有の「顧客接点が少ない」という特徴が挙げられます。保険の営業は基本的にオフラインがメインとなりますが、一度保険に加入した後は、怪我や入院をするまでユーザーと会う機会は極端に少なくなります。平安保険はこれを危機と捉え、保険以外の様々なサービスを通じて顧客接点を増やす戦略を打ち出しました。
そこで生まれたサービスの1つが、「平安グッドドクターアプリ」です。「平安グッドドクターアプリ」は、アプリ上で無料の問診を受けることができ、診断結果に基づいて良質な医療機関と良質な医者を紹介してくれるサービスです。2020年時点で2億ユーザー以上がこのアプリを利用しています。
このアプリが支持される背景には、中国の医療サービスの実態が関係しています。中国の医療サービスは質の差が激しく、良い医者もいれば悪質な医者もいますが、患者からすれば医者の質を見分けるのは非常に困難です。そのため、総合病院などの整理券が転売屋によって法外な高額で売られるようなことが多々ありました。
ですが、この平安保険のアプリを使えば、アプリ上で医者の経歴や論文データ、口コミなどを確認し、それらの情報をもとに医者を選ぶことができるため、患者は安心して診察を受けることができます。これまでの中国の医療の実態を考えると、非常に画期的なシステムでした。
そしてこのアプリをユーザーが活用することで、いつどこでどのような症状が出て、どのような医療機関に行ったのかという行動データを把握することができます。そのデータを元に、保険の営業マンは最適なタイミングで、より深いコミュニケーションを顧客と取ることができるのです。
まとめ
今回は、GE、Tesla、平安保険の3社の海外DX先進事例を見てきました。GEは、自社のノウハウやデータなどの強みをテクノロジーにうまく結び付け、成果を生み出しています。そしてTeslaと平安保険は、これまでの業界の常識や課題を覆し、より良い顧客体験を提供するために様々な工夫をこなし、サービスを展開しています。
各社ともに、今までにないアプローチを取ることでデジタル化を推進し、大きな成功を収めています。顧客志向に立ち、これまでとは違った視点から戦略を練ることが、DX推進において重要であると言えるでしょう。
Cogent Labsは、手書き文字や活字をはじめとしたあらゆる文字をデータ化する『SmartRead』というサービスをご用意してます。文字の認識率99.22%の技術力から、データ入力業務の効率化とコスト削減できるソリューションです。
AIを活用した文書のデータ化からDXを推進!
AI OCRを超える文書読取り&自動仕分け「SmartRead(スマートリード)」はコチラ>>