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バックオフィスにおけるDX動向 – 人事編(HRテック)②「海外の活用事例」

前回は、DX推進における第一歩として、「Small Start, Fail First(スモールスタート、フェイルファースト)」つまり、DXの対象を絞り、素早く実行し、失敗し、失敗から学ぶということを繰り返すことに最適な分野として、バックオフィス業務、その中でも人事領域(HR Tech)の動向を取り上げました。それを受けて、今回は海外でのHR Techの活用事例のご紹介を通じて、より理解を深めていければと思います。

前回分析したようにHR Techの領域は、大きくわけると以下の3つの分野に集約されます。

1. データ分析(メトリクス管理、ピープルアナリティクス)
2. 人材管理(タレントマネジメント)
3. 基幹業務(人事管理、給与計算、勤務管理、人事申請)

それぞれの分野で、様々テクノロジーを活用することで、大きな成果を出すことに成功している事例をご紹介していきたいと思います。

まず最初に、以下の企業がデータ分析でHRTechを活用して、成果を上げています。

Nielsen

グローバルなリサーチ会社であるNielsenは、優秀な人材の離職が問題となっていました。そこで、2015年に優秀な人材の離職を防止するための予測モデルを作り上げました。
このモデルは、社員の年齢や性別、勤続年数、上司の評価など20項目に基づくもので、その予測モデルを活用することで、次のようなことが判明しました。

1. 入社1年目が最も重要。最初のパフォーマンス評価時期も来ない期間で、退職可能性は大幅に上昇している
2. 当初予想では影響があると思われたが、性別や民族性は勤続年数に全く影響しない。
3. 昇進は離職可能性を下げる。またいわゆる水平異動(部署や職種は変わるが地位や賃金にあまり変化がない異動)も離職可能性を下げる

この分析に基づいて、退職の可能性が高い社員にアプローチし、現在の仕事内容についてヒアリングを行い、40%の該当社員の配置転換などを行うことで、離職可能性が高い社員の48%を思いとどまらせることに成功しました。

次に人材管理、とくに人材研修で成果を出した事例です。

 

Walmart

世界最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmartは、イノベーションを続ける企業としても有名です。そしてよりよい体験を買い物客だけでなく、従業員にも提供できる方法を常に模索しています。その一環として、従来のキャッシャーからセルフサービスタイプのキャッシャーに変更し、その業務にあたっていた従業員を買い物客一人ひとりに対応する「パーソナルショッパー」として育成しています。

その育成方法として、VR(仮想現実)のヘッドセットを利用し、何百人にもおよぶ従業員の行動を元に、想定シナリオをつくりあげました。そのシナリオに基づいて買い物客や他の従業員にどのように対応するかをトレーニング・評価するシステムを作り上げました。

このシステムを活用して、トレーニングはもちろん仮想的な顧客への対応による人事評価も行われています。

最後に基幹業務におけるテクノロジーの活用事例をご紹介します。

 

LASD

世界最大の保安官組織であるLASD(LosAngelos Sheriff Department)では、その業務の性格上、採用にあたっては非常に厳しいバックグラウンドチェックが課されています。

従来は、1つのポジションに対して1人当たり25ページの紙の書類が必要となり、応募数は400以上にも及ぶため、採用する際にはトータル1000ページ以上にもおよぶ紙の書類を処理する必要がありました。この書類の多さがセキュリティ上も業務効率という意味でも、正確性という面でも問題になっていました。

そこで、紙の書類の代わりにデジタルで必要な情報を集めることができるHR用自動化システムを構築しました。

このシステムを活用することで、従来は18ヶ月かかっていた採用までの時間が大幅に短縮されたことはもちろん、応募した人も従来は選考状況がわからなかったものが、ひと目で選考状況を確認できるようになったりと大幅に改善しました。

その結果、従来は400程度の応募数だったものが、導入1年目で3倍以上の1305もの応募に対応することが可能となりました。

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「バックオフィスにおけるDX」としてHR Techについて事例を上げてご紹介いたしました。次回は、「バックオフィスにおけるDX」における他の領域でのDXについて考えていきたいと思います。

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